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| Have Fun ! |
| 矢口 明 | いざ！ 肉弾撮影 | 400字詰原稿用紙 約130枚 |
| 著者略歴／年齢不詳。職業不詳。高校、大学と映研に所属し、自主映画に携わってきた。小説は、「映画と違って人もカネもいらないのがいいよね」。 | ビデオ映画専門の弱小プロダクションにハリウッドから制作の打診が……。限られた予算とタイムリミットのせめぎあいを背景に、プロデューサーとディレクターの反目と暴走が始まった。 | 【ダウンロード】 ZIP |
| 作品冒頭 | ||
造形と映像と文学の三学科からなる芸術大学の近所に、映画プロダクション『ＧＡＫＵ ＦＩＬＭＳ』はある。 もともと鹿島岳人と萩尾守の二人が学生時代に設立したもので、最初は鹿島が暮らすアパートが事務所だったが、タウン情報誌が主催する自主映画コンクールでグランプリを獲得したのを契機に雑居ビルの三階に引っ越した。卒業から十五年。ビデオ用映画で二人は食いつないでいた。作品も水準以上のものが多く、業界では重宝されていた。 鹿島は、今朝、ファクスが吐き出した文書を訳し終えると、英和辞典を放り出した。 「ハリウッドがおれたちを待ってるぜ！」 「ハリウッド？ うちを映画のバイヤーかなんかと勘違いしてるんじゃないの」 ワープロで企画書を打ちながら、萩尾は興味なさそうな声をだした。 「そうじゃないんだ。ほれ」 乱雑に置かれた機材を、小太りのからだで器用によけながら、鹿島はファクス用紙を萩尾の鼻先に突きつけた。 「横の鉛筆が、おれの訳だ」 「忙しいんだよ、おれ。昼いちで企画六本持ってかなくちゃならないんだぞ」 萩尾は煩わしそうに片手で紙片を払った。神経質そうな目が、縁無し眼鏡の奥から鹿島を睨む。 いつもなら黙る鹿島だが、半端ではない制作費を動かすチャンスが転がり込みかけていることで、プロデューサー魂が激しく刺激されていた。 「そんな企画書はどうだっていい。ハリウッドから映画作らないかって言ってきてんだぞ」 タイピングの音がぴたりと止まった。椅子ごと、細身のからだをぐるりと回して萩尾はファクス用紙を受け取った。たっぷり三分間、文字を追ったあとで萩尾は顔を上げた。 |
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