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| 陶 広志 | 弔いの橋は闇に佇む | 400字詰原稿用紙 約356枚 |
| 著者敬白／「立川流モノはひとまず終了。今回のキャラクターが気に入っているので、スピンオフというかたちでシリーズ化したいと思っています」 | 真言立川流三部作パート３。表と裏の世界に暗躍する宗教コーディネーターが邪宗門の扉を開いてしまった！ 政界まで巻き込んだ教団拡大計画を潰すことができるのか？ 著者渾身のハードロマン。 ※著者インタビューページへ |
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| 作品冒頭 | ||
秋雨前線は日本海の上空で綻びをみせはじめ、大陸で成長した高気圧団に押しつぶされかけていた。 頼りなげな雨が人けのないオフィス街を静かに覆っている。新聞配達のバイクがかすかな雨音をかき消し、水しぶきをはね上げながら朝まだきの街を駆け抜けていく。 ライトが、路上のわだかまりを捉えた。運転していた新聞奨学生は眼を瞠った。人、のようだった。いや、人だ。背を丸めてからだの右側を下にして横たわっている。雨水と血液をたっぷり吸ったスーツをまとっていた。ホームレスが寝ているのではない。死体だ、と思った瞬間、バランスを失った。 スーパーカブは道路を斜めに走り抜け側溝に乗り上げて路肩の植え込みに突っ込んだ。前籠に詰め込んでいた新聞が、防水シートごと宙に舞った。 からだのあちこちを打撲しているが、痛みはまるで感じなかった。路上の死体をなるべく見ないようにしてジャンパーのポケットから携帯電話を引っ張りだした。 営業車やマイカーが道路を塞ぐ時間にはまだ早く、パトカーは通報から約三分で到着した。 丸の内にほど近いこの道路は、朝の通勤ラッシュ時にはサラリーマンやＯＬで溢れかえる。通勤時間への配慮か、警察はてきぱきと現場の撮影を進め、遺体を検視に搬出すると、パトカーを一台現場に残して撤収した。 二名の巡査が、トランクルームからポリタンクとデッキブラシを引っ張り出して清掃に取りかかった。 「最近、よくあるよな」年配の巡査が言った。「今回は雨上がりだから助かったよ。掃除が楽でいいや」 「こんな仏さんばっかりだったら、いいですけどね」 若手巡査が軽口を返した。 |
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