| 作品のダウンロードは、LHAまたはZIPの文字をクリック。ダウンロード後は展開（解凍）が必要です。作品は基本的にプレーンテキストですから、ほとんどのアプリケーションで開くことができます。 【ご注意】 作品に関するすべての権利は著者に帰属します。作品の全部または一部の無断複製・転載を禁じます。 個人利用の目的以外に使用しますと著作権法違反で処罰されます。 |
|
| Have Fun ! |
| 犬 去 | 妻の文箱 | 400字詰原稿用紙 約129枚 |
| 著者敬白／「身近に嫁という“ 秘境 ”があることを発見し、こんな空想をしたわけで。本物の嫁のコワサにはかないません（笑）」 | 妻は、わたしを裏切っているのかもしれない。不審な電話、遅い帰宅、深夜の囁き。すべての疑惑は妻の文箱を開けたときから始まった。分譲マンションの閉ざされた空間で夫が見たものとは？ | 【ダウンロード】 ZIP |
| 作品冒頭 | ||
こういう箱を文箱というのでしょうか。便箋などを入れる、深さ五、六センチのＡ四判ほどの大きさで、藤編みに紅色の漆をかけた箱でした。あるいは手文庫というのかもしれませんが、わたしが最初にそれを見つけたとき、心に浮かんだのは「妻の文箱」ということばの響きだったのです。 その箱をマンションの和室の押入れで見つけたとき、わたしは暇と退屈を持てあましていた状態でした。そうでもなければ、寝室にしていた和室の押入れのなかをわざわざのぞくどころか、押入れの襖を開けることもなかったはずです。 わたしはその日、風邪をひいて会社を休んでいました。前日に妻の出してくれた風邪薬を飲んで、夜の十時には床に入っています。妻がわたしの同僚宅に病欠の連絡を入れてくれるというので、安心して眠りにつけたのです。 目が覚めたのは昼すぎでした。妻が雨戸を閉めておいてくれたものですから、東向きの六畳の和室は真っ暗で、朝日に邪魔されることなく、ぐっすりと眠ることができました。頭のなかに石のように凝り固まっていた眠気のシコリのようなものがすっかりほぐれて、とても気分のいい目覚めです。風邪薬を飲んで眠りについた次の日はいつもこのように、頭のなかがすっきりとして平和な気持ちになれるのです。 わたしはしばらく横になって、会社の上司や同僚の普段の月曜日を想像しました。みんなが働いているのに家で休んでいて、しかも、いつにない清々しい目覚めを堪能していることに後ろめたさを感じましたが、わたしがいるのといないのとでは会社の日常に大差はないのでしょう。その少し違って、多くは違わないという現実に、わたしは一抹の不安と寂しさをあわせて感じたものです。 |
||
| ライブラリートップへ | ||||
| Library NAVIGATIONへ | ||||
| 新刊書架へ | ||||
| ★AZUSA PremieR★書架へ | ||||
| 蔵書目録へ | ||||
 |
Web Publishing AZUSA (C)2003 All rights reserved.