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| Have Fun ! |
| 鏑木 要 | ジェイコブズ・ラダー ―ヤコブの梯子― |
400字詰原稿用紙 約196枚 |
| 著者敬白／「これは、男にとってのファンタジー。ハードな描写を織り込んだのはいいけれど、話の落としどころに苦労しました」 | 大学最後の夏に、彼らは彼女と出会った。数か月後、官能の遊戯は悲劇とともに幕を閉じる。そして８年後、家庭を持つ彼らのもとに、過去が形を変えて甦る。エロティック・サスペンス。 | 【ダウンロード】 ZIP |
| 作品冒頭 | ||
格式という点で、大阪では三本の指に入ると言われているホテルだけに、抑制のきいた豪華さが、披露宴を金線の入ったベールのように温かく包んでいた。 「ふたたび、新郎新婦の入場です。温かい拍手でお迎えくださいませ」 司会者のことばが終わらぬうちに、百人あまりの参列者の間から拍手がわいた。潮騒にも似た音は、重々しいドアが内側に引き開けられた瞬間に、最高潮に達した。 「撮らないのか」 フランス料理の残骸の向こうから津村尚久が訊いた。 となりに座る佐々木徹も訝しげな視線を堂山裕次のビデオカメラに向けている。 「撮りたきゃ撮ってこいよ。勝手に使ってくれ」 堂山は年季の入ったビデオカメラに冷たい一瞥をくれた。矢内健太郎の晴れ姿を撮影しようという気は失せてしまっていた。大阪に本社を置く家電メーカーに勤務する矢内の結婚式は、ビデオカメラの展示会さながらだった。招待された同僚たちはこぞって最新型のカメラを回している。中には、業務用のデジタルビデオカメラを肩に載せている男もいる盛り上がりようだ。 「仲人が常務じゃしかたないぜ、堂山。他社製品を使ってるやつがいないか、雛壇の上から目を光らせてる」堂山の心中を察した津村が、笑って言った。「ま、いいさ。祝儀ぶん、しっかり食って飲もうぜ」 「若い嫁さん貰いやがって、あいつ」 佐々木が、ふんと鼻を鳴らした。スポットライトとストロボが新郎新婦を浮かび上がらせている。純白のウェディングドレスが新婦の瑞々しさを引き立てていた。 津村、堂山、佐々木、そして矢内は大学時代からの親友四人組だった。 関西の名門校、Ｋ学院大学で経済学を学んだ。クラブやサークルは別だったが、始終べったりではないことが、かえって四人を固く結びつけていた。矢内は地元の家電メーカーに就職し、あとの三人は東京の企業に就職した。 大学を卒業して八年たつが、折々に全員が、あるいは別個に旧交を温め合っていた。 「それにしても、矢内も世渡りがうまくなったもんだ。一番の出世頭じゃないか」 |
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